024.若干の番外編(その3) 車はレコード針だ!ルート42はステレオDUBサウンドで決めろ!

 

 

 

 

前回のひとりゴチ過ぎを反省し、イントロ無しで始めます。新宮に到着出来なくなるので。では場面は車中、時刻は午後5時55分、現地点は三重県。前回最後に見えた標識を若干アップ気味で。

 

 

 

 

これを見て解るように、三重県尾鷲市まであと少しです。車で1時間以内でしょうか。その尾鷲から新宮の実家までが更に1時間半くらい?。途中の食事や買物も含め、9時半までには到着したいです。現時点までの乗車時間/CD演奏時間の総計は(4:52:58)で、大体5時間です。

 

 

 

 

何とも言えない牧歌的な風景がガードレール越しに見えます。ではこの風景に合うBGMを選びましょう。時刻は夕方、もうすぐ日沈です。関西で夕方と言えばお笑い番組の時間です。関西圏以外の方に説明しますと、関西ネットのテレビ網では夕方5時から7時くらいまで、お笑い番組が多数放映されていました。特に私が新宮在住の1980年あたりは漫才ブームもあり、盛んに放映されていました。おそらく三重も和歌山と同じく関西系番組が放映されているのでしょう。ではこのCDを!

<◎『キダ・タロー / 浪花のモーツアルト キダ・タローのすべて(disc2)』(74:20)>

『キダ・タロー』名義では何と初のアルバム、1992年編纂の2枚組CDです。4部構成になっており、disc1が「テレビ・ラジオCMソング篇 / 企業社歌・校歌・市歌篇」で、disc2が「テレビ・ラジオ・テーマソング篇 / 歌謡曲篇」です。なぜdisc2にしたかと言うと前半の「テレビ・ラジオ・テーマソング篇」が、関西系テレビで育った人間にとっては発見の連続&ベタに懐かし過ぎ!だからです。前回の「複雑骨折したノスタルジー」と逆の感情です。当時ほとんどの人は、キダ作品とは知らずに聴いていたのではないでしょうか。

この牧歌的な風景と夕暮れの時間帯に、キダ・メロディーがハマり過ぎです!

このCDが発売された’92年の時点でキダ氏は、3000曲以上の作/編曲を手掛けられていたのですが、その殆どの音源が散逸してしまい、四方八方から85曲を掻き集めこのCDを制作したそうです・・・3000曲って!・・・ここから25年経った今、何千曲に増えているのでしょう?当然、数秒のジングルから60秒前後の番組テーマまで、短い曲もたくさんあるでしょう。それら全てを聴いてみたいと思うのは、決して私だけではありますまい。『キダ・タロー・コンプリートワークス 1960~20××』をリリースする事は日本人、いや全人類に課せられた最後のタスクと言えましょう。サージェント・ペパーズ箱ごときで浮かれていてはいけません!CDだと100枚組くらい?200枚組?何れにせよその巨大ボックスをリリースする際には、サブタイトルに『アジアのフランク・ザッパ ∞ TARO KIDA’S SPECTACLE VOX』『東洋のサン・ラ ☆ キダ・タローの惑星大移動』ぐらいハッタリの利いた邦題をつけて欲しいものです。それ程キダ氏が日本、こと関西に及ぼした影響は量り知れず、関西圏のある部分を形成したと言っても過言でありません。私が現在の権力者と結託した歴史編纂家なら「喜田太漏乃神ノ、眉毛最尾ヨリ滴リ落チタル汗ノ雫、落下シタル後、七日経チテ凝固サリテ、其ハ後ニ五畿ノ國ト呼バレリ」とでも記して歴史を改竄してしまう事でしょう———♥

・・・とか、キダ創世神話を夢想しているうちに、案内標識が見えました!

ブレていますが「海山」の出口です。カイザンでもウミヤマでもなく「ミヤマ」と読みます。前回チラリ登場した堀端さんが海山出身で、クワさんは間もなく到着する尾鷲出身です。

クワさんは音楽ライターでかれこれ十余年のお付き合い。先日拙宅で “各々が最近激安で入手したカセットをひたすら聴く” 遊びをしました。楽しかったの何の!オッサンという部位にギリモザさえかければ、ド田舎の馬鹿な高校生二人でしょう!畳に腹這いスタイルのジャージ姿で洋モノえろ本を閲覧しつつ9割増しの異性体験話をし乍らカップヌードル乃至どん兵衛を食せば完璧でしたが。

堀端さんは———字面を合わせたくなったので以降バタさんとします、堀端さん勝手にすいません!———で、バタさんは昨年末クワさんの紹介で知り合った、クワさんの高校の同級生。バタさんは海山在住で介護関係の仕事をされてますが、やはり一筋縄では行きません。デイサービスのご老人にカルトなファンクバンド “じゃがたら” の曲を弾き語ったり、ご老人に向けて『DJイベント@介護施設』の企画もされているのです。ちなみにフロア、でなく施設内が最も盛上がるキラーチューンは「炭坑節」と、江利チエミ「テネシー・ワルツ」だそうです。「いや~こないだ、かなりデカめのハコで廻したんだけど、やっぱり向こうは日本と全然ノリが違うっていうかさ~」ってな事を自慢げに語るDJ諸氏!そんな青二才グルーヴで貴殿達は本当に満足ですか?諸君が未だ到達し得ない年輪という名の解脱グルーヴを体感できる鬼ヤバのハコが徒歩10分圏内にゴロゴロとありますぞ!

・・・ここで何故か高速道路は一旦途切れ、一般道の国道42号線に放り出されます。クワさん・バタさんお待たせしました、尾鷲に到着です!と、言っても通過するだけですが。。。

尾鷲を抜けると再び高速に入ります。つまりブツ切れ状態。いつ紀伊半島全体が繋がるのか?

BGMは先刻からキダ・メロディー後半「歌謡曲篇」に突入。大好きな歌手バーブ佐竹の「虫けらの唄」が。「死んだぁ~親父ぃは~極道ぉ者でぇ~、逃げたぁ~お袋ぉ~酒づかりぃ~」・・・合いません!このメカメカしいB級SF激安CG的トンネルは、この曲を徹底的に排除しようとしています。

 

 

 

 

トンネルを出るとすっかり日没。iPad写真は午後6時52分の表示。ナビ表示は現在「新鹿町」

しばらく走るとキダ先生CDが終了。「受験生のみんな!起きてるかな~?次のCDはクワさん・バタさんのお二人にリスペクトを込めて!」と昭和深夜AMディスクジョッキー風な紹介を。

 

 

 

 

◎『ザ・ブルーハーツ / YOUNG AND PRETTY』(43:53)>

これがリリースされた’87年当時、クワさん・バタさんは多分高校生で、試験勉強や受験勉強に勤しんでいた事でしょう。誠に勝手な想像ですが、紀伊半島の辺境な地域で鬱屈した感情を抱えながらもこのCDだかLP、あるいはカセットを聴いていたのではないでしょうか・・・って、あくまで想像ですよ、想像!それほどこの時期の『ザ・ブルーハーツ』は、地方の中高生を鼓舞する何かがあったと思います。’80年代後半の日本語パンクは田舎の風景に良く合います。

・・・気が付くと先程から再び一般道に。高速はこの辺で終了。案内標識には熊野古道の表示。

現在三重県熊野市付近の国道42号線を走行中。和歌山県との県境少し手前の一般道です。「国境なんてないんだよ」とかいう唄がありましたが、県境は確実に存在します。気付くとかなりの空腹。何処かにお好み焼店でもないかとしばし車で探しましたが、時世に倣い素直に家人のiPhoneで調べると・・・ありました、割と近くに良さげな店が。便利な世の中です。。。

 

 

 

 

パタパタと腹ごしらえを済ませ、再び乗車。少し走った所でブルハCD終了。ではおそらく新宮到着に至るまでの最後の〆、いはゆる大トリにこのCDをチョイス!

 

 

 


<◎『ニュー・エイジ・ステッパーズ / アクション・バトルフィールド』(52:06)>

’81年英国産DUB(ダブ)サウンド。DUBとはどんな音楽?———レゲエ音源にエフェクト等の電気的加工や処理を施したり、テープ操作や編集でヴォーカル等をIN/OUTさせたり、妙な電気音が左右スピーカーを飛び交ったりする音楽です。このジャンルはあまり詳しくないので極端な説明ですが。『ニュー・エイジ・ステッパーズ』はバンドと言うよりセッションプロジェクト色の強い集団で、’80年1stは実験色が濃く、’83年3rdはレゲエ色濃厚。この’81年2ndはその中間の音で一聴するとマイルドですが、聴く度に巧妙な仕掛けや実験性に気付かされる、だまし絵的魅力満載のアルバムです。

で、なぜこれを大トリに選んだかと言うと———バタさんが「車でニュー・エイジ・ステッパーズを大音量で聴きながら、この辺の真っ暗なクネクネした夜道を走ると気持ちいいんですよ!」と仰いました。それを聞いて長年ぼんやりと考えていたパズルが解けた気がしたのです。

恐ろしく個人的な妄想ですが———車に乗った時、道路がレコード盤のミゾに、車がレコード針に感じた事ってないですか?何時からかは記憶にないのですが、常にぼんやりそれを考えています。V字に刻まれたミゾの左右に同じ凹凸を刻んだのがモノラル盤、左右別々の凹凸を刻んだがステレオ盤。レコード針視点だと、針が左右にのみ揺れるのがモノラル盤で、針が上下左右に揺れる事によって音の奥行きや立体感を出すのがステレオ盤です。

私が言いたいのはこうです———車をレコード針と見立てると、平坦な都会の道路は左右の動きしか無く、視覚的にも左右似た様な色調なのでモノラル的。対して、高低差とクネりの上下左右の動きがあり、山と海のように左右がまるで別の色調の地方の道路こそ、ステレオ的だと感じるのです!実際にレコード盤上で針付きミニカーを走行させる玩具もありますが、それはそれとして。。。

・・・それで予想通りこのCD、国道42号線こと “ルート42” の風景にマッチしています。高低差もクネりも激しく外灯も少ない真っ暗な夜道に、DUBがハマり過ぎです!バタさんの言ってた事は本当でした。しかし先程からその暗さと車の揺れが邪魔をしてマトモな写真が撮れません。

何枚か撮りましたが揺れとブレとボケで殆ど “裸のラリーズ” のステージ写真みたいです。見せれるのはこれくらいかも。。。クネった場所でもなく、ピンボケですが。。。

至福の “夜道DUB@ルート42” を堪能。幾分ボーッとして新熊野大橋に。橋の真中から新宮市です。

 

 

 

 

橋を渡って三重県からやっと、和歌山県の新宮市に到着です!

しばらく市内を走り、実家近くの大型スーパーに着きました。

 

買物を済ませ車で数分の実家に向かいます。狭い道を幾つか抜けると実家の駐車場が見えました。スピードを落とし駐車位置に → ブレーキをかけてSTOP → 停車と同時にニュー・エイジ・ステッパーズCD最後の曲が終了!って、このタイミングは何?前回の逡巡も、このタイミングの時間調整だったのでは?時計を見ると時刻は午後9時20分。何とか9時半までに辿り着けました。

今回CD時間の合計(2:50:19)・・・約3時間。前々回からのCD総演奏時間/総乗車時間(7:43:17)・・・約8時間。CD時間だけ合算しても相当な長旅。出発したのは午前10時35分。聴いたCDは10枚+3曲。8月・9月にも東京と新宮を往復する予定、しかし車での帰郷は今回限りで。では3回に及んだ半端ロードムーヴィーにご同乗の皆様、お車を運転の際はくれぐれも針飛びにはお気をつけ下さいませ!

 


 

———余談をひとつ。十数年前ドイツ在住の方と音楽話をしていました。「日本に於けるサイケデリックとは、曲がりクネった紀伊半島の山道を車で迷い、酔って死にそうになった時に嗅いだダイハツ車のニオイによる酩酊感の事だ!」と言うと深くうなずき感心しているのです。それでこの方ドイツに帰国して、あるドイツ人ミュージシャンにそれを伝えたそうです。半ば伝説のヒッピー・パンクスなお方です。曰く『そのHIDEKIたらの言っていることは正解だ!HIDEKIはサイケデリイク・ムジークの究極的核心を突いている!』・・・しかし、よくよく考えてみたらばですよ、デュッセル在住のこのお方に、紀伊半島、ダイハツ車なんてニュアンスが伝わったのでしょうか。。。

これを教えてくれたのは「ドイツ在住の方」を私に紹介した人で、常に話を100倍に膨らます癖有リ〼。なので信憑性は薄いのですが。その人は一体誰かと問われれば———K氏!貴殿の事です!

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