K氏、「こんなCDとカセットを聞いて作品の着色と植毛をしました」は7回にも及んだのですね。当初は3回か4回ぐらいでと考えていたのですが、ちょっとした長期連載になってしまいました。
この、私の作品に関する長い長い記述は今回で終了です。通読してくれた皆様、誠に感謝します!
こうやって何ヵ月か前の作業内容を克明に思い出しながらブログを記していますと、不思議なものでもう一度同じ作業を繰り返しているかのような心持ちになったりします。何処か、普段の作品制作と同時進行で、もう一つ作品を手掛けているような気持ちになるのです。
そして本日、植毛作業最終日です。なので気分は「きめてやる今夜」by内田裕也なのです。
では前回からの続きです。この作業の「最後の最後の最後のサンバ」by三上寛って、しつこいか!
●植毛第3日 植毛最終日はアギャキャー!と叫んではオロッ?と正気になったりしち
さて気を引き締めて、前日からと同じテイストの植毛作業を引き続き続行します。前回も書きましたが、フィニッシュが近づくにつれ、当然ですが植えた毛の本数が増えていきます。その増えた毛を掻き分けながらの植毛作業なので、刻一刻と困難さが増幅して行くのです。おそらく今日一日で、大した本数は植毛しません。作品を凝視している時間の方が長いのでしょう。
———更に慎重に慎重に。1本植毛しては全体を見る。その繰り返し、しか無いのです。
それでは肝心の選曲です。今日で決着を着ける為にはアギャキャーとしたメッタメタなまでの音楽パワーが必要です。2日目前半は山上たつひこ、そして本日、気分は谷岡ヤスジなのです!
繊細な作業になればなる程、喧しい音楽が必要!何故かと尋ねられても非常に困るのですが。。。集中しなければ良い作品は完成しない事は当たり前です。しかしそれだけでは無いのです。散漫な気分も同様にキープし続けなければ作品にマジックは産まれないのです。
で、それは何かと尋ねたら、私にとってそれを具現化した存在が谷岡ヤスジ先生の漫画なのです。“アギャキャー!” と “オロッ?” の双方向性無限音階! “静と動” と言うより “性と怒” の無限地獄!幼稚園時にガキ道に遭遇して以来その毒に感染しまくっち、しちそこから得たスピリッチとは、、、
———集中と散漫を交互では無く同時進行で!!アルマーニのスーチでキメたホームレスの精神!!病弱女性軍による女神輿!!仏像の形をした爆弾と爆弾の形をした仏像を交互に制作!!じゃる気ない不揃いのチアリーダー!!嗚呼、浪越徳治郎の映画「愛の三分間指圧」が見たい!!
しかしそのスピリッチをアレする、谷岡シェンシェー自身が歌う音盤は’71年のシングル盤1枚のみ。その復刻CDシングルを一日中鬼リピートするのは流石に人生後戻り出来なくなりそうなので、わたくしが勝手に思う “谷岡スピリッチ” を体現したCD音盤をセレクトしました。こんな感じです。
◎『CAPTAIN BEEFHEART & THE MAGIC BAND / LICK MY DICALS OFF, BABY』(’70年)
何はともあれ “谷岡スピリッチ” の口火を切るのはこの方しかいないでしょう!この1ツ前の作品は変態ロック史上のデス傑作で私の永遠のNo.1なのですが、ヤスジ度で言えばむしろこちらが上。時期的にも “メッタメタガキ道講座イメージサウンドトラック盤” と邦盤オビに絶対入れるべきです!
◎『S.O.B. / LEAVE ME ALONE+DON’T BE SWINDLE』(’86/’87年)
そして、ハード・コア・パンクもかなりヤスジ度の高い音楽です。試しにヤスジ漫画を読みながら、この辺りの音を聴いてみて下さい。ちなみにスラッシュ・メタルはヤスジ漫画に合いませんでした。
◎『JON / SMOKE』(’96年)
メッタメタ音だけが “谷岡スピリッチ” ではありません。 このJONは着ぐるみを被りオルガンを弾き動物目線の日常をほわほわと唄うのですが、断じて昨今の地下っ娘や不思議っ娘では無いのです。歌詞も動物ならではの間抜けさと辛辣な部分が同居、聴き手をヤスジ漫画 “ドシッ” の目にさせます。曲のタイトルも「CHIKKUNTTE NARU」「SASATTERU」等で、正に今の作業にピッタリです。
植毛作業の方は何とか97%まで完了といった所でしょうか。あともう少しで作品完成です。それでは引き続き “谷岡スピリッチ音楽パート2” で、98%くらいを目指しち作業を続行します!
◎『ディアマンダ・ギャラスwithジョン・ポール・ジョーンズ/ザ・スポーティング・ライフ』(’94年)
何オクターブだか計測不可能な程の声域を自在に操る前衛女性ヴォイス・パフォーマーが、元ツェッペリンのジョンと越境コラボレート。イマ・スマックがレス・バクスターと組んだ名盤「ミラクルズ」(’72年)を意識したのでは?うっすらとツェッペリン臭のするサウンドに乗せた驚異的アギャキャー・ロック!ジャケ写真横顔もヤスジ的。歯の間に魚の骨が挟まってそうです。
◎『近藤十四郎 with 水の底楽団 / 近藤十四郎 with 水の底楽団』(’03年)
音楽雑誌のレビューで読んで、音を聴く前からファンになってしまった十四郎兄ィ名義の1st音盤。フォークからもブルースからも、そしてその何れからも逸脱してしまった奇々怪々な自作曲を、悶絶するムジ鳥の様な声でシャウト!と思えば意外としんみりした曲も。でも歌詞が圧倒的に変!!バックの演奏のバタつきも神業的脱力感です!ヤスジ漫画で言うと「メッタメタガキ道講座」から「のんびり物語」までを時間軸無視メガミックスしたかの如き音像が私の脳内を駆け巡ります。後日幸運にも御本人と交流を持てましたが、シブいお声で、ムジ鳥Voiceではありませんでした。
◎『TRIO / DELUXE EDITION(2枚組)』(’80~’82年)
「ダー・ダー・ダァ」の’82年世界的ポテン・ヒットにより一躍脚光を浴びた謎のオッサン3人組。ヤスジ漫画があまり注目されていなかった’70年代中期の「ヤスジの任侠道」辺りに出て来そうな不可解な登場人物を思わせる異形のルックスで、その見た目通りのシュールな音楽を奏でます。スカスカでド単調、しかし妙ニ歌心有リの、クセになる “ゆるゆるヤスジ・ロックン・ロール” です。
よし、98%まで来ました!あと90分で決着を付けます!植毛の方はあと数本植えるかどうかです。おそらく大半の時間は作品を凝視する事になるのでしょう。ミニ・アルバムとシングルCDを選び、大体90分くらいになるようにと考えながら 改めて5連CDプレイヤーにセットします。これは作業ラストの習慣で、私流の〆なのです。では最後の “谷岡スピリッチ音楽パート3” を!
◎『未映子 / 頭の中と世界の結婚 (7曲入ミニ・アルバム) 』(’05年)
わたくしが、小説・詩・エッセイ、そして御本人自体にも大リスペクトを捧げる川上未映子さんが、書籍デビュー直前にリリースしたCD。この方の著作には「髪」と「ふち」という言葉がよく出ます。そして、このCDのブックレット内は「髪」写真が満載なのです!更に歌詞中に「ふち」も出ます!「髪」と「ふち」で「ふぇち」に作品を作るわたくしとしては、とても他人事とは思えません!しかしこのCDのどこが “谷岡スピリッチ” なのかと言うと、音楽の内容よりはむしろ———この方の写真を見る度にいつも「花っぺ」に似ている!と思うのは私だけなのでしょうか?
◎『想い出波止場 / シュガー・クリップ (マキシ・シングルCD)』(’97年)
この形容不可能なバンドのリーダーである山本精一さんと言うお方も私は全く面識有りませんが、かなりヤスジ度が高い人物なのではないかと秘かに思っています。音楽もそうなのですがその立ち姿・発言といい、達観しているのかあるいはその逆なのか全く持って解読不可能です。川上未映子さんが「花っぺ」なら、この方の正体は「ペタシ」なのではないでしょうか?
◎『部長と桜子 / 吐息のループ (マキシ・シングルCD)』 (’07年)
“解りやすくベタベタのえろ” も、ヤスジ漫画に於けるもう一つの大きな要素です。このCDは常に “オギオギ” と “ドスうずき” してそうな「部長」と、“アッヘー!” で “キクーッ!!” な美人「桜子」による、ベタベタ・えろえろ・デュエット・ソングで見事放送禁止に!ヤスジえろサイドな名曲。
◎『セックス・ピストルズ / ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン(マキシ・シングルCD)』 (’02年)
私にとっての “パンク・スピリット” とは “谷岡スピリッチ” の事に他成りません。クラッシュやダムド等のバンドに何処かピンと来なかったのは “谷岡スピリッチ” を感じなかったからなのです。現在も活躍しているミュージシャンの中で最も “谷岡スピリッチ” を体現されているお方と言えば、このジョン・ライドン・シェンシェーがダントツ一番でしょう!このCDはパンク25周年とかで、へっぽこなダンス・ミックス盤です。へっぽこな楽曲が大好物の私にとってはかなりイイ曲です。彼に多大なる影響を与えたのは殿さまキングスの「宮路オサム」と「メッタメタガキ道講座」だという “大胆過ぎる天動説” を、わたくし信じきってサトリきっております。勝手にしやがれ!!
◎『谷岡ヤスジ / ヤスジのオラオラ節 (8cm・シングルCD)』 (’71年)
植毛作業の最後、そして作品完成の最後を飾る偉大な “谷岡スピリッチ” のテーマ曲はと言えば、やっぱり御本人に登場して頂かない訳にはいきません。このCDは2004年にDVD化された映画「谷岡ヤスジのメッタメタガキ道講座」付録としてオラオラオラ~ッ!と復刻されたものです。このDVDはヤスジ信者にとっての教典か御本尊様です。復刻して頂いたナイスな方にも大感謝!この素晴らしい楽曲に関してはシバラシすぎちなぁ~んもいうコトがなかったりしち。
丁度CDが終わった所で、99%植毛が完了しました → それはつまり、作品完成なのです!!では、粘土原型制作から足掛け3年に及んだ作品 ↓『B2-BA』の完成写真を改めてもう一度。
完成に至るまでの最後の20日間、お付き合いありがとうございました!次回からは通常モードで!
オロッ?と言う顔をしてますね、K氏。何で100%じゃないのかと聞きたいのでしょう、その目は?
———何故99%で完成なのかと言うと、100%を目指して過去に失敗した事があるからなのです。100%を目指すと作業に終わりがなくなり、もう少しだもう少しだとテンパっているうちにゴールを通り過ぎてしまったりするのです。そして「100%だ!」とその時思えた作品に限って、何故か後から見返す気が失せてしまうのです。過去の経験から、どうやら99%が最適値のようです。
2015年11月29日深夜、正確には30日。時刻はもうすぐ夜明け——— “アサに近いヨルーッ!” です。
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長期連載お疲れ様でした。
こうして可視化されてみると予想以上に濃厚っすね(^q^)
サブカル音楽方面から新たなファンが増えることを願っております。