020.特別番外編〜暫くの御無沙汰とiMusic、そして謎の『ラジカセ蛍光灯ランタン』


<※さてこの変なモノは何だと思いますか?是非、動画をご覧下さい!>

K氏、本当にお久しぶりです。前回の第19回アップが8月24日なので、4ヶ月のブランクです。

このブログはあくまでも音楽ブログなので、プライベートな事は極力書かない様にしてきました。しかし今回に限っては「特別番外編」と言う事で、ここ2〜3ヶ月の出来事を書かせて下さい。

 


 

9月18日に、私の実姉が病死致しました。まだ50代前半でした。本当に急死でした。その日の午後1時に知らせがあり、大急ぎでカバンに荷物を詰め込み新幹線に飛び乗りました。実家に着いたのは夜の11時頃。私の故郷は和歌山県の新宮というかなり交通の不便な所にあるので、可能な限り最速の交通手段を用いても、これぐらいの時間がかかってしまうのです。

2010年に父親が亡くなり、それからは実家で母と姉が二人で暮らしていました。その後、一言で言い表せないくらい面倒で複雑な諸事があり、私は日々頭を悩ませていました。

その為、父の死後数年間は帰郷する事も叶わず、更にここ3年間は電話も出来ない様な状態でした。望郷の念なんて自分にはカケラ程もないと思っていたのですが、流石にこの状態はキツかったです。それ故、祖霊信仰なぞ激薄な私が、今年のお盆は家人と自分達流の祭壇を飾ってみたりしたのです。

9月18日、何の実感も哀しさも感じないまま数年ぶりに実家に帰ると、殆どゴミ屋敷と化した家に母親と母のいとこにあたる女性がいました。予想はしていましたが、母はかなりの認知症状態。恐らくここ2〜3年で進行したのでしょう。同じ話を何度も繰り返しています。

それから11月18日に東京に戻るまでの2ヶ月間、毎日が怒涛のような忙しさでした。人が一人この世から居なくなると、こんなにも多様な雑事が回転寿司的にやって来るのですね。

<葬儀社打ち合わせ・母の通院する病院付き添い・写真館で遺影のプリント・金融機関解約・お通夜・葬式・大量の可燃ゴミ出し・金融機関の書類整理・市役所手続き・郵便局通帳解約・生命保険解約・年金解約・複雑で理解不能なリサイクルゴミ収集・墓掃除・墓参り・仏壇の掃除・不用品回収業者に見積り依頼・台所床陥没部分の簡易修理・家具の移動・母の精密検査付き添い・・・・・>

手帳から帰郷直後の日程をザッと拾ってみました。怠け者の私にとって拷問的ハードワーク。その間も炊事や洗濯や掃除や買物といった謂わゆる家事、親戚や公共機関や金融機関等への連絡、永遠に湧き出て来る不要物の処分、話がループする母親との禅問答と化した会話等日々是全日也。更には買ったばかりの不慣れなiPadで、母に合いそうな介護施設を調べたり書類を取り寄せたり。署名・捺印・署名・捺印・署名・捺印・署名・捺印・・・・・を一体何回繰り返した事でしょうか。カウントはしていませんが、おそらく100回以上200回未満だと思います。

ハナっから母も姉も整理能力が皆無なので、生命保険の証書等は必ず数箇所に分散しているのです。その折角整理した書類を認知症の母が混ぜかえし、肝心な時に見つからない事が頻繁にありました。ある時なぞ信用金庫の通帳が見当たらず、電話で問い合わせると担当者が預かっているとの事。安心したのも束の間、肝心のその預り証が無い!どれだけ探しても!仕方ないから再発行か、、、2、3日後、台所の整理をしていました。段ボール箱の中には芽の出まくった大量のジャガイモが。しかも大半が腐っていて。物凄い勢いで捨てまくると → 何と箱の底から通帳の預り証登場!天功だかマリックだか司郎だかの昭和臭い奇術を目の当たりにした気分にてしばしの間感嘆。

・・・と、いう様な毎日を過ごしていると、きっかり1ヶ月で全身に蕁麻疹が出てダウン!この2ヶ月間で点滴2回注射1回と、3度も病院のお世話になるハメに。毎日煩雑な用事が片付くのが大体夜の11時頃。半ばヤケでビールを煽りそのまま眠る日々。朝は病院の付き添いか、脅迫的に時間にシビアなゴミ出しか、何らかの電話があり寝坊も儘ならず。

こういう暗澹たる気分でも続かない限り自ら積極的にネットを見る事はないのですが、ふと電源を入れてみた姉が何年も放置しっぱなしのPCは現在、ネットには接続されていない模様。しかしAirMacたらいうもんが接続されていてWi-fiたらをアレすると、どうやら音楽が聴けるらしい。

なので先に東京に帰った家人にiPadを緊急入手 → ややこしい設定等してもらい → 新宮に輸出。パソコン大苦手な私が電話であれやこれやと指示してもらい、何とかお試し無料期間中のiMusicで音楽が聴けるまでに辿り着く!本当に僅かながらも救われました、このサービスには。

 

フランク・ザッパというアーティストの作品は生前もかなりの量が出ていましたが、1993年死没後もかなりの作品数がリリースされ、そのあまりの多さに追い付けません状態でした。それがiMusicでは殆ど全ての音源が聴ける!iPadを入手してからはザッパ三昧の日々。母はiPadを “けったいな音が次々とマロビ出てくるけったいな金属板” と認識していたようです。

ザッパ以外に聴いた音では、’80年代の一時期まで聴いてやっぱり大量リリースで途中挫折した、ペル・ウブやサイキックTVといったベテラン組の自分にとって未聴の’90年代以降の音源。更には、死後いいかげんな謎のライブ音源が流出しまくったキャプテン・ビーフハートの半公式録音。その他は普段聴いているLPやCDを次から次へと検索してiMusicのクリアーな音で。。。

しかし、、、何かが物足りないのです。そりゃ確かに今までだったらこれだけの音源を聴くのに、恐るべき量のLPやCDを持ち運ばなければ成らなかった事でしょう。DJバック幾つか分の。LPをひっくり返したりCDをケースに出し入れしたりと言った煩わしい手間もありません。「しかし、そういった手間こそが音楽を聴く楽しみ」的な事を言いたいのではありません。何と言うか感覚的にラジオなのです。わたくしにとってはこのiMusicでの音楽の聴き方が。聴いている途中で別の曲や別のアルバムに簡単に切り替えられてとても便利!なのですが、これもわたくしにとってはカラオケでリモコンに入力/取り消ししている程度の便利さと言うか。アナログ/アナクロついでに言えば、8トラの切り替えレバーをガチャガチャする様なもんと言うか。しかし何れにせよ到着してから約1カ月半、このiMusicによって救われた事は確かなのです。

それで余談ですが、私の耳だか脳だかが何故か日本語の音楽を受け付けなくなってしまったのです。それが帰国、、、おっと、帰京した現在も若干尾を引いてしまっているのです。そりゃあ煩瑣で持って回った言い回しだらけの生命保険の約款や福祉施設の利用規約を、日本語の音楽を聴きながら読むのは至難の技だとは思いますが、ここまで尾を引くとは。

今、ようやっと電気グルーヴやギターウルフ等の、歌詞よりもサウンド!的な和モノが少し聴ける様になった所です。パンタなんか暫く無理。エレカシも無理。三上寛なんかもっての他。あまりにも情報量が多すぎた2ヶ月だったので、ってな事なのでしょうか。良く解りませんがこの脳。

 

      ※         ※         ※

 

さて話は変わりまして、来る日も来る日も家中の不要物という名のゴミを片付けていた時の事です。車で市内のゴミセンターに運んだ大量のゴミ、リサイクルショップに引き取ってもらったゴミ、毎週月・木に出る大型ゴミ袋数個分のゴミ、月2回永遠に出るリサイクルのゴミ・・・・・一体どれ位ゴミを出した事でしょうか、この2ヶ月間で。それでもまだまだあるのです。

或る日、棚を覆う様に塞いでいたゴミを移動すると、そこに未使用感満載の謎の箱がありました・・・・・ラジカセ!?・・・に、しては何だか変。・・・ランタン?大型の懐中電灯?

はい!それは全て正解です!正式名称『ラジカセ蛍光灯ランタン』なるトンチキな代物です。「アウトドアレジャーや防災用に機能満載」と、箱四面に渡りしつこく書いています。でも実用品としてどうなのでしょう?防水仕様でもなければ、造りも大して頑丈には見えないし。箱の蓋部分には「アルカリ単1乾電池、4本を別にお求めください」って・・・単1が4本も必要!ACコードは付いていない・・・ってそりゃそうか、基本、防災用で野外用ですものこのランタン。箱の表記によると<1.可動式蛍光灯ランタン 2.サーチライト 3.LED点滅灯 4.FM/AMラジオ 5.再生専用カセットプレイヤー 6.サイレン>以上が『ラジカセ蛍光灯ランタン』標準機能です。

に、してもFM/AMラジオは理解できるとして、何故にカセットプレイヤーが緊急時に必要?「アウトドアレジャー」に活用する際には華奢なCDよりも手軽なカセットだよね、って事??ラジカセとして考えれば製造意図・年代も不明。が、よくよく見たらば「2005年製」のシール ↓ が!

そうですかゼロ年代系ですか。失礼しました。昨今のカセットブームを一早く予見ってヤツですね。

家族の誰が・いつ・何の目的で購入したのか全く不明のこの『ラジカセ蛍光灯ランタン』を、唯一の戦利品として東京に持ち帰りました。又、変なラジカセが一台増えてしまいましたが。帰って早速アルカリ単1乾電池を4本・・・って100円ショップで1本108円、つまり432円。高い!

説明書の電池寿命の記載には<ラジオ500時間、テープ50時間、ライト15時間、蛍光灯2灯6時間>・・・テ、テープ50時間って!つまり一日5時間聴いたとして、僅か10日間しか聴けないって事!比較するのも愚の骨頂だとは思いますが、上記したiMusicは1ヶ月聴き放題で980円。なおかつこのランタン氏、音は当然の如く超モノラル!巻き戻し機能も外部入力機能も一切ナシ!

とは言えせっかく乾電池を買って入れたので、手開け式(!)のフタを開きカセットテープをSET → 再生ボタンON! → さてこのランタンからどんなけったいな音が飛び出して来ますやら・・・ところが!・・・これって意外に良音かも?未使用だからも当然あるとは思いますが。良音と言っても教室ボロスピーカーでも聴き易い滑舌の良い先生の声、っちゅうイメージですが。

それでは『ラジカセ蛍光灯ランタン』お宝グラビア、指で破らずカッター等で開封してご覧下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうですか、このワケの解らなさ!どう見ても大して役に立つとは思えないツブシの効かなさ!尚かつ50時間で432円と言う燃費の悪さ!・・・とか、書いていてフト思ったんですが・・・・・・このダメさ加減はまるでわたくしそのものです!巻き戻し機能も外部入力機能も一切ナシ!

 


 

K氏、この『ラジカセ蛍光灯ランタン』を持ち帰ってからわたくしずっと考えているのです。このランタン氏に「緊急時にも聴けるよう、常に入れておくカセット」は一体何が最適なのかと。流石に10本程収納出来るカセットケースを持ち歩く方はいないでしょう、この緊急時に!しかもわたくしに課せられたタスクはソフトとしてのカセットテープなのです、あくまでも!ダビングしたカセットテープではこの非常事態を乗り切る事は不可能でしょう、きっと!とか考えた所で、一向に最適なるカセットは思い付きません。非常事態はもう迫っているのです!

お気に入りのアーチストだからといって緊急時に常に聴きたい訳ではないでしょうし、レア物カセットを常時入れて置くのも気が引けるし、かと言って非常事態に最適のBGMなんてもしあったとしても、自分は良いとしても周囲の目や耳がそれを許すのかどうか。。。

・・・「無人島レコード」より難易度が上かも、この「非常事態カセット」の選定。

むしろ自分に取って微妙に思い入れの薄いアーチスト/カセットテープの方が、この場合は意外に適合するのかもとの思いに至り、カセットを収納している棚を見廻していると1本のカセットに目が止まりました。2001年に下高井戸サムにて315円で買ったこれに決定です!

 

 

 

 

 

そうです■『プリンス/パープル・レイン』(’84年)です。一体何故?って顔をしてますね、K氏。・・・実は今年逝去された殿下こそが、私と姉が唯一共通で聴いていたアーチストだからなのです。

私が小学生の頃のベイ・シティ・ローラーズから始まり、セックス・ピストルズ、クラッシュ、アナーキー、プラスチックス、YMO、ブームタウン・ラッツ、M、トム・ロビンソン・バンド、ウルトラヴォックス、パンタ、頭脳警察、ディーヴォ、クラフトワーク、B-52’s・・・・・・

姉はこの辺りの音楽を私の前でこれ見よがしに聴いては、得意げに色々と教えてくれました。こうやって並べて見ると、当時の私にパンク/ニュー・ウェイヴへの引導を渡してくれたのは、間違いなく姉だったのです。その姉も30代半ばからは、あまり音楽を聴かなくなってしまいました。

それでも姉が何とは無しに聴いていたのがプリンスでした。と言っても所有していたCDはおそらく10枚程度でしょう。私も同じ様なものです。今、大半は手元に残っていませんが。

購入時から音が劣化していたこのカセットを『ラジカセ蛍光灯ランタン』で再生してみました。モノラルスピーカーから聴こえて来る、劣化したカセットの、ゴージャスで厚ぼったい80年代の音。

・・・何故かこの劣化したモノラルの音を聴いて、姉が死んだ事が初めて実感できたのです。

 

      ※         ※         ※

 

今回のブログを最後まで読んで下さった方々に感謝を捧げます。ありがとうございます。

そしてもう一度、冒頭の動画をクリックして音楽を聴いてみて下さい。では、メリー・クリスマス!

2 thoughts on “020.特別番外編〜暫くの御無沙汰とiMusic、そして謎の『ラジカセ蛍光灯ランタン』

  1. SECRET: 0
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    ’90年頃の商品と思いきや、まさかの2005年製…!
    音ではなくこの機器そのものがヴェイパーウェイヴっぽい。
    劣化プリンスのチョイスは流石です。
    音楽面でのお姉様の影響、かなり大きかったのですね。
    お悔やみ申し上げます。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとう!
    こうやって書いて、やっと少し気持ちが整理出来たかな、という感じです。
    確かに色々な意味で、姉の影響は大きかったのかと、改めて気付きました。

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