023.若干の番外編(その2) 車内BGM選びは二度づけ厳禁~韓国ロックは紀伊半島の香り!

 

K氏から見た前回後半の写真は「どこさァ、それェ?」って訛りが飛び出すぐらいの、全く馴染みのない風景だったのでしょうね。K氏とは方向が真逆だからね、お互い奥地とは言え。東京を出発点と考え高速道路で北に行くか西に行くかと考えると、おそらく最初の1~2時間は双方の風景にそれほど大差は無いでしょう。しょせん関東圏というワク内の、ひたすら続く道・道・道なので。しかし大体3時間を越えて関東圏を脱出した辺りから、北に行くのと西に行くのでは見える風景にかなりの差が出て来るのではないかと、今回改めて感じました。

さて、前回のブログ終了時点までの合計乗車時間は3時間半。伊勢湾岸道路に突入し、車窓から見える風景も出発時点とはかなり変化して来ました。忘れた方は前回の写真をご参照下さい。それでは、再び発車します!

 


 

時刻は午後4時30分。このシャープな風景にドンピシャなBGMとは、工業地帯に合うコンクリート臭のするロック。キャロルやダウンタウン・ブギ・ウギ・バンドでは、幾分まったりし過ぎか。と言うか、そもそも持って来てないし。ここは一発、シャキシャキしたスピード感のあるロックンロールを。しかもスパイス程度のヤンキー臭入りの。車窓からは道路と微妙に曇った空のグレイな景色しか眼に入りません。ではやっぱり、これしか無いでしょう!

◎『ザ・ルースターズ / ザ・ルースターズ(1st)』(31:49)

おお、正にぴったり!イイ感じです。どこか石井聰互的狂い咲き感というか爆裂テイスト満載。行け行け、ブッ飛ばせェ~!ガキの遊びじゃねェんだ!み~んなブッ殺せるヤツくれェ~!!!・・・と、ほんの一時自我が完全に消滅し山田辰夫兄ィが馮依。家人も見て見ぬ振りというか、聴いて聴かぬ振りで運転に集中。でも、心持ちスピードがアップしているように感じられるのは気のせいかしら?ドライバーである家人も完全に目が吊り上がり、何らかが馮依し始めた模様。

・・・しかし絶頂感というものは、得てして長くは続かないものと相場が決まっているのです。3曲目が終わった辺りから、風景に更なる変化が出て来ました。

 

 

 

 

そこでこのルースターズ1stが、現在眼に映る風景に果たしてドンピシャなBGMなのか?と、疑問が生じ始めて来たのです。しかしそれがそんなに大した事なのかい!と大半の人は思うのでしょう。至極真っ当なリアクションですね社会人としてそして常識人として。で、何をそんなに迷っているのかと申しますと。。。

———私は車内でCDをかける際に、自分自身に課しているタスクというか『鉄の戒律』があります。前回のブログを最後までお読みになられた聡明なる資本家の皆様は既にお気付きの事だと思います。それは以下の3点です。但し、完遂出来ない事もたまにはありますが———

1)一度プレイヤーに入れたCDは全曲が終了するまで停止させない。冒頭から最後まで聴く。
2)ランダム再生、シャッフル機能等を使用しない。つまり、CDに収録された曲順で聴く。
3)同じアーティストのCDを続けてかけない。但し、組物はこの限りではない。

一体全体、何のタスクなんだ!と仰いたい気持ちはよく解ります。とかく選曲時わたくしは「けっ!こちとらトーシロじゃあるまいし!一旦入れたCDを引っ込めれるかってんだ!ランダムたらシャッフルたらもしゃらくせぇ!それに同じ野郎の歌声なんざ続けて聴いていられるかってんだ!」と、生粋の江戸っ子的心境になっているのです。紀伊半島に帰るくせに。

さて話は「ルースターズに対する迷いでんでん」・・・では無く「ルースターズに対する迷い云々」に戻ります。確かにルースターズがドンピシャだったのです最初の方は。しかしこんな風景が眼の前を通り過ぎる度、嗚呼、あのCDの方がよりジャストなのでは?との考えが頭を去来するのです。

ええい!ここは、でんでんついでにその手法までも見習い、自分で掲げた公約をあっさりと反故にしましょう!ルースターズは取りあえず3曲でストップ。先刻から気になっていたのはこのCDです。風景的にも丁度彼らのアルバムジャケットを彷彿させる工場群が遠くに観えております。

◎『リザード / リザード(1st)』(※但し、忘れて来ました)

ルースターズ1stが’80年で、このリザードは’79年。時期的にも近いし、、、ですが、、、あれ、見当たりません、、、’02年に発掘された’78年のライブ盤を持って来てしまったみたいです。収納時にケースを入れ間違ったのでしょう。でも、、、この工場風景は、どう考えてもリザードでしょう!

『リザード / LIVE AT S-KEN STUDIO’78 and more!』(9:08)(※但し、3曲目まで)

流石に映えておりますこの風景にこの音楽!やっぱりチェインジして正解だった、、、かな?、、、いやちょっと待ってよ、このライブ盤のモモヨのヴォーカル、異常に粘っぽいんですけど!時期的にまだグラムの影響が強かった頃って事?このCDそれほど聴いてなかったけどこんなに湿度高かったっけ、、、あ、合わない、絶望的に風景にマッチしない、、、道路が沼地に見えて来た、、、完全な選曲ミス!!!スタジオ録音の1stだったらバッチリだったハズなのに、、、

———かくなる上は、強行採決アゲインです!時刻は明け方ではありませんが。運転者である家人も何かが馮依したというより、むしろそれを取り除く事でかろうじて生計を立てているドいんちき臭いC級霊能者の氷のような目つきになって、何とかハンドルを握っている状態です。このままだと二人して激烈な車酔いになりそうです。わたくしも辰夫兄ィの如くのヘビ声になり、高速道路上を訳の解らん銃をブッ発し乍ら走り廻りそうです。すいませんリザード並びにモモヨさん。あなた方には何の罪もございません。何があろうともわたくし永遠に大ファンである事を誓います。故にこのCDは3曲で停止させて頂きます。今回の当方の不手際に関しましては何卒ご理解の程、、、、、、

我が人生最大級にへりくだるだけへりくだったので贖罪されたものと勝手に判断し、再びCDをルースターズに。4曲目から再スタート!車窓からの景観も若干リザード色が薄れ、工場の風景もいつしか彼方に。誓います!以降二度づけは固く禁止します。

 

馮依したりへりくだったりしているうちに、時刻は午後5時13分。さんざん逡巡したルースターズのCDも、ようやっと終了です。ゆっくりとですが陽も沈みつつあります。

春の夕暮れのこの時間帯って、かなりノスタルジーを喚起させられますよね。。。とか又、感傷にヒタっている場合ではないのです!ではそのノスタルジーとやらを、これからしばらく続くであろう地方の牧歌的なこの風景にどうやって合致させれば良いのか。その為にはどんな音楽の力を借りれば良いのか。ここが悩みどころなのです。

子供の頃に聴いた音楽。あるいは十代の多感な時期に、風景と共に脳裏に焼き付いてしまった音楽。若しくは十数年前、今回同様に家人と車で帰省した時に聴いた音楽・・・例えばこういった個人的ノスタルジー要素満載の音楽を「さあ、懐かし気分に浸ろう!」と思って聴き出したまでは良いけれども、意外にあっさり途中でどうでも良くなってしまった・・・って経験ないですか?実はわたくし多いのです、それが。それと反対に、全く適当且つ無防備に音楽を聴いた刹那『懐かしの紀伊半島マル秘映像上映会』が脳内小人映写技師によって勝手に始まって、、、嗚呼、STOPして下さい!その映像!———バロウズじゃないけれど、ノスタルジーもある種のウィルスなのでしょう、きっと。

自己分析すると、どうやら私の頭にあるノスタルジー回路はかなり複雑骨折しているようです。おそらく故郷に対する歪んだ難儀な感情が投影されているのでしょう。「何だかんだいって、生まれ故郷が大好き」とかストレートに言える人が本当に羨ましい。但し後付けで無理して仰っている方はどうかと思いますが。それに普段理知的な人でさえ何故か故郷の話になると、好き/嫌いの二元論で話を完結させようとしがちだったりもします。私にとって不思議な事の一つです。ノスタルジー → 郷土愛 → ナショナリズム、みたいな三段論法的な思考の人が最近増えて来たのも困ったものですね。

・・・とかゴチている場合でもなく、BGMを選ぼうとしていたのです!現在、夕暮れ時の5時13分。車窓からの風景は、所々陽が差しています。幼少期にこの辺の風景を見た事があるかと考えてみれば、殆ど記憶には無いのですが、最終到達地である新宮市周辺を何処となく彷彿させる風景なのです。とっても紀伊半島っぽい風景というか。そこで、このCDをチョイス!

◎『申重鉉(シン・ジュン・ヒョン) / Anthology part1&2 1958~(disc7)』(42:34)

前回のブログでも少し触れた韓国ロックのゴッド・ファーザー、シン・ジュン・ヒョン大先生の登場です!・・・って、さんざん幼少期のノスタルジーとか紀伊半島とか言っておいて、何で韓国ロックなんだよ?又この風景を韓国のド田舎に見立てようってのか!・・・はい、仰りたい事はわかります。そのご意見は半分は正解で半分はちょっと違うかな、って感じですね。

このブログの第20回にも少し書きましたが、この数年来厄介な事情があり帰郷が叶わない状態でした。何故だかその間ドップリと韓国映画にハマりました。更に韓国旅行にも行きました。その余波でしばらく途絶えていた韓国音楽熱も再沸騰しました。それで韓国映画を次から次へと観ていてある時気付いたのです———自分は韓国の田舎の風景に紀伊半島を投影して観ているという事に———おそらくここが「私の頭部にあるノスタルジー回路はかなり複雑骨折している」部分なのでしょう。韓国の田舎と紀伊半島の田舎がどれくらい似ているかと聞かれれば、正直良くは解りません。私の実家は、南紀白浜~新宮市へと居を移し、その周辺と奈良県十津川村に親戚宅があります。なので私の脳内にサンプリングされている紀伊半島の画像はと言えば、大半がその辺りの風景なのです。

・・・で、先程からシン・ジュン・ヒョン大先生のCDが始まっております。タイトルにあるように古くは1958年から、最新曲は2005年までが網羅されているキャリア集大成の9枚組CDです。ポニーキャニオン・コリアから出たとは思えない程の盤起こし針音バチバチの音ですが、素晴らしく充実した内容です。9枚中このdisc7は1980~83年の10曲が収録されており、時節柄若干ニューウェイヴ寄りの音なのです。1980~83年と言えば丁度私が新宮在住の高校生だった時期で、自分の小遣いでレコードを買い始めた時期でもあるのです。地方でも入手可能な程度の、英国・米国・日本のニューウェイヴ物を買い集めていました。しかし当時の私は『韓国のシン・ジュン・ヒョン』など当然知る由もありません。当時日本で一体どのくらいの人が、大先生のレコードを聴いていたのでしょうか?と言うか、そもそも1980年代初頭に韓国ロックの輸入盤が日本に入荷していたのでしょうか?

 

 

 

 

 

記憶には無いけれども、幼少期に見た風景を彷彿させる場所と、そこで映える音楽。リアルタイムでは聴かなかったけれども、懐かしさを感じる音楽。私の高校時代に韓国でリリースされ、’80年代初頭の同時代性を感じさせる音楽。曖昧で確かな手触りは何一つありませんが、これが私にとってのノスタルジーなのでしょう。シン・ジュン・ヒョン大先生のモタついたニューウェイヴ感覚が見事に風景にマッチし、高校時代のやる瀬無い気分が鮮やかに甦りました!

 

 

 

 

・・・とか言ってるうちにやっと見えて参りました、待望の案内標識です!クワさん、堀端さん、お待たせしました!尾鷲までもう少しです!・・・と、ここでタイミング良く大先生のCDが終了。今回、新宮到着までを書くつもりが至れず、それもこれもがひとりゴチ過ぎの所以なり。以降、次回に続きます。

前回からのCD総演奏時間/総乗車時間(4:52:58)は、大体5時間。そして今回ブログ内でのCD演奏時間(83:31)は、色々と逡巡していたロスも含め約1時間半。時刻は午後5時55分。まあ大体、夕方の6時ですね、、、って、そんな短時間内の出来事をタラタラ書いていた訳ですか今回は!このペースだと果たして次は新宮に無事到着出来るのか!?

 


 

「クワさん・堀端さん」なる人物は誰?って顔していますね、K氏。はい、お答えします。このお二方は先程標識に出て来た三重県尾鷲市と、その少し手前の海山出身のナイスガイです。両者共、音楽に関しては一家言も十家言もあります。なので、この続き(その3)にも登場して頂く予定です。

次回は「新宮に無事到着出来るのか編」———森脇美貴夫曰く『震えて待て!』

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