016.こんなCDとカセットを聞いて作品の着色と植毛をしました その6~スロー鳥瞰視点の植毛編

<※写真はイメージです>

 

さてK氏、この植毛2日目の前半戦で、わたくしの肩も首も手もすでにバキバキになっております。一点を見つめ過ぎて目もかなり寄り目になっているのでしょう。作品の価格においてはおそらく足元にも及びませんが、現時点の寄り目具合に於いてだけは立派にヨーコか弥生クラスです。

ビッグ・ネームに成るには寄り目にならなければいけないのでしょうか。いやです!寄り目人生は。

この寄り目ライフを一刻も早く脱却しなければ!だから直ちに植毛作業に入ります。

 


 

では前回からの続きです。思い描いた部分への植毛がこの日の前半でザッと一通り終わったので、後半は全体を見ながら少し足りない部分に、さらに毛を植え足して行く作業なのですが。。。

 

●植毛第2日(後編) なるべくワケの解らない音~スローなスピード感にしてくれ

ここから先の作業は、先に植えた毛を掻き分けながら植毛すると言ったかなり厄介な作業です。この難儀さ、前回も少しだけ触れました。当然1本植毛する為の作業効率も、グッと下がります。

せっかく苦労して植毛針の二股に割れたで針先で1本の毛を挟んでも、掻き分けているうちに外れてしまう事が多々あります。植毛する角度も考慮し、表面温度もキープしなければなりません。

さて、この厄介な植毛作業に入るにあたって、音によって気分を一新させようと思います。この日の前半戦ではあまりにも脳に直接、音を注入し過ぎたので、流石に耳も頭も疲れ気味です。だからと言っていはゆる「癒し系」な音なんかでは、作業は全く進みません!イライラするのです!

何故だかよく勘違いされるのです。静かな音楽を聞いて植毛や着色をしているのではないかと。この変チキブログを読んで下さっているセレブリティの皆様は既にお気付きの事と思われますが、わたくし基本的に静かな音楽はあまり聞かないのです。いや、正確に言うとLPでは聞くのですが。クラシックや現代音楽もLPでは多少、、、と言っても数える程しか所有しておりませんが。

ジャズ、クラシック、現代音楽のCDも、今までに何枚か購入して作業時に聴いた事はあるのですが、いかんせん私の作品制作の波長に全く合わないのです。作業効率がぐっと落ちるのです。各ジャンル5~6枚ぐらいたまっては、やっぱりダメかなと手放す。それを何度か繰り返しました。なので現在、これらのCDは殆ど手元に残っておりません。ジャーマン・プログレも然りなのです。これらを聴いて作業し、ハッと気付くと貧乏揺すりをしているので、作品制作に支障アリなのです。どうやらわたくし内の健次な田舎血がむしゃくしゃするんじゃあと騒いでしまうみたいです。

 

それではむしゃくしゃしない音楽を。なるべくけったいで訳の解らない音を選曲。そんな気分です。
◎『ディック・エル・デマシアド / クンビア・ルナティカ/エクスペリメンターレ』(’03~’08年)◎『グンジョーガクレヨン / グンジョーガクレヨン(1st)』(’80年)◎『JOE MEEK & THE BLUE MEN / I HEAR A NEW WORLD』(’60年)

『ディック・エル・デマシアド』はオランダ人で、南米コロンビア産ダンス音楽 “クンビア” を、打ち込みでへっぽこに電化した “デジタル・クンビア” の第一人者。キテレツさここに極まれり!何処か、帰って来たヨッパライがドイツのATA TAKレーベルに乱入した様にも聴こえます。『グンジョーガクレヨン』は日本の誇る、超ジャンル分け不可能集団。フリー・ジャズにも、ノイズにも、即興音楽にも聴こえたりもしますが結局そのいずれでもありません。坂本龍一参加。映画監督でも、小説家でも、絵描きでも、必ずマッド・サイエンティスト的な人がいますが『JOE MEEK』はその音楽番長のお方です。イギリス軍隊でレーダー技師として働き、除隊後はテレビのエンジニア、その後独立音楽プロデューサーに。ドラム代わりに戸を叩き、泡、電気のショート音、ナイフの振動まで効果音に使用、ヴォーカルはバスルーム(!)で録音。恐るべきテープ編集を駆使して奏でるのは、一聴したところ意外にマトモなロックン・ロール。しかし何とも形容し難い宇宙志向の効果音が、聴き手の平行感覚を微妙に歪ませるのです。密室で織りなされる奇妙でパースの狂った世界。わたくしも是非見習わなければ、なのです。

作品の方はかなり思い描いた感じに植毛が進んでおります。90%と言った所でしょうか。しかし、どんどん作業が困難になるのです。更に累積した毛を掻き分けながらの植毛ですので。

作品をじっくりと見つめては1本毛を植える。針先大の不足なる一点を探しては凝視する。この広いジャングルの木々の中に一粒の木の実はあるのだろうか?と言った鳥瞰の目線です。

 

そこで更にもう一度、音によって気分を変えようと思います。空から見下ろす感じの視線で。。。ゆっくりと優雅に飛ばねば見逃します。矛盾する言葉ですが、スローなスピード感が必要なのです。
◎『フィッシュマンズ / ロング・シーズン』 (’96年)◎『浅川マキ / ONE』(’80年)◎『小杉武久 / キャッチ・ウェイブ』(’75年)

『フィッシュマンズ』は35分全1曲。正に風邪薬でやられちまいそうなスローなスピード感です。『浅川マキ』はこの時期ややジャジーなフリー・インプロヴィゼイションを指向しており、特にこのアルバムでは即興演奏の間の真空部分を探す様にゆっくりと言葉を紡いでいきます。CDでは5曲目、LPではB面全ての17分に及ぶ「PIGNOSEと手紙」の、スロー&スピードは圧巻です!タージマハル旅行団の『小杉武久』は電化されたバイオリンで空気中のウェイブをキャッチします。これを聴くと脳内に棲息する何かが、超スローと超スピードの間をゆったりと行き来するのです。

植毛作業の方は何とか95%まで来ました。あとほんの少しなのですが、今日はここまでです。この作業、流石に長時間は無理です。判断力が低下していて無用の植毛をしてしまいそうなのです。

以降、植毛第3日はラスト大詰めの次回へと続きます。最後にもう一度音楽で気分をチェインジし、明日中に何としても植毛を終わらせて、この作品に決着を着けようと考えています!

 


 

K氏は確か、植毛作業を横でヘビ見した事があったよね?流石にやりづらかった記憶がありますが。俺にもやらせてくれのK氏の懇願をバリ無視して、淡々と植毛している氷血野郎と思ったはずです。しかしこれには理由があるのです。一旦手を離してしまうと同じモードには戻れないのです。植毛法、毛を植えるピッチ、角度等ももちろんなのですが、何と言うか精神的に戻れないのです。

植毛作業をしている期間は作業場を離れて自部屋に居ても、冒頭に書いたような寄り目状態。目だけでは無く頭までもが立体裸眼視をしそこなったような感覚、安ホラー映画の安CG霊体が視界のそこここに浮遊し、わたくしをアナザー・ワールドへといざなうかの如しなのです。

K氏、今現在気が遠くなりそうですではなく、わたくしすでに気は遠くなっています。その遠くなった「気」で、針先と1本の毛と蝋の表面を見つめ続けていた二日間だったのです。

———思えば「気」なんてものはこの20余年程、ずっと遠かったのでしょう。おそらく!

その立体裸眼視をしそこなった目で長年K氏を見ていたのではないかという反省がこの所少し。。。

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