K氏、前々回も書きましたが、このブログって本当に変な事書いてますよね。そもそも作品制作の途中経過写真も無いのに、その作業BGMをこの所書き連ねている訳ですから。
それでもたくさんの方が読んで下さっていて感謝に耐えません!誠に有り難い限りです!!
更に今回はわたくしの作品制作作業中、最も・おそらく・誰ひとりとして共感のしようが無い、植毛作業についてのお話なのです。一体どのくらいの方が植毛した事ってあるのでしょうか?、、、勿論、御自身の頭部にって意味では無いですよ!くれぐれも誤解なさらぬよう。
「ほう!キミの世代でも植毛時の音楽は若干電気化された民謡や音頭を聴きますか!同感同感!」と、ゴールデン街or中央線の、店内も!人間関係も!!そしてココロも!!!狭い×3のお店で、作務衣着用白髪長髪1本縛り心は二十歳自称自由人女性には甘々の話のクドいおっさんに捕まり、延々と植毛指南をされ気付くと終電を逃すという事はおそらく28世紀くらいまでは無いのでしょう。
———とか言うヨタ話をいつもの様にしている場合では無いのです!兎に角、地獄の針山登山、植毛作業がこれからようやく始まろうとしているのです。では刺します!
、、、とは言っても、刺す前に植毛作業についての若干の説明をしなければなりません。写真も無いので、あまりにも訳が解らないかと思いますので。何とか文章で伝われば良いのですが。
1.先ずは着色作業17日目で裏返ったままの作品を、オモテ面に戻して設置し直します。今度は凹凸を完全に無くしフラットにエアキャップを敷き、作業中に作品が滑らない様にします。
2.作品のどの部分に植毛するか慎重に考察します。毛の長さはどのくらいが良いのかも考えます。やがて考え疲れると思考が停止します。そして成り行きにまかせようと心をリセットします。考え過ぎると全体的なシルエットや生え際が“いかにも”な感じになったりもしますので。
3.植毛用の毛髪が作業時に絡まらない様、丁寧にブラッシングします。長さも揃えて束にします。
4.植毛用の針を選びます。この針は縫い針の穴部分を加工してY字もしくはV字型にしたものです。当然、自作です。なので長さも太さも様々なヴァリエーションが有ります。その植毛針を、ピンバイスと言う金属軸にセットします。ドリルに極細の刃をセットする時に用いるものです。
5.蝋彫刻作品の植毛する部分を、ドライヤーで少しだけ暖めます。植毛針を刺し易くする為です。全く説明のしようが無いのですが、触るとほんのちょっと暖かいくらい。人肌程度かな、と。
これでやっと準備が整いました。これでようやく植毛作業に入れます。
●植毛第1日 初日は民謡と音頭の正月気分~これではいかんと醬油味ロックに移行
では作業を開始します。蝋の表面が上記5.の適温状態になっているのを再度確認した後に、植毛針の針先で上記3.の毛髪の束から1本の毛を挟み、植毛する目標の場所に針を近づけます。そして、どのような角度に植毛するかを考えた上で、毛を挟んだ植毛針を慎重に突き刺します。深さは5~8mmくらいでしょうか。慎重にゆっくりと針を刺し、ゆっくりと抜きます。急いで針を抜いてしまうと、毛が一緒に抜けてしまう事がよくあるからなのです。
どの場所から植毛するのかと言うと、下側からです。逆だと思われがちなのですが。このブログ第9回の1枚目の作品写真を参照して欲しいのですが、写真の左側—丸い部分の下方から、写真の中央—割と毛が密集したV字っぽい箇所に向って1本1本植えて行きます。もし逆に植毛してしまうと、先に植えた毛を掻き分けて植毛という難儀な事態になってしまいます。
蝋人形の植毛の場合も同じです。やっぱり、襟足やもみあげから最初に植毛をして行きます。なので、どんなに長髪の美男美女の蝋人形を作ろうとも、植毛作業の途中段階に於いては一律頭頂部ツルッパゲの落ち武者晒し首状態、更には農耕一揆カムイ伝状態に陥ってしまうのです。
———さてそれでは、植毛作業の初日に最も適した音楽とは一体どのジャンルでしょうか?
自分でもどうしてか全く解らないのですが、この作業の導入はいつも民謡と音頭からなのです。それから徐々にスピードを上げて行くのですが、先ずはまったりと始めます。ここら辺りから。
■『二代目遠藤お直 / 民謡お国めぐり』(カセット)(北から南までのストレートな民謡12曲。’83年)◎『桜川唯丸 / ウランバン』(江州音頭の革命児による大名盤!是非ライブ盤も出して下さい!’91年)◎『伊藤多喜雄 / TAKIO SONG』(民謡功労章受賞記念の非売品らしいです。録音は’86~’96年)◎『初音家賢次 / 河内音頭 旅立て俊徳丸』(’59年の原録音1曲と現代的ミックス4曲。激シブ!’10年)
まだ周囲2~4cmにチョロチョロと毛が生えているぐらいの状態です。それでも今回の植毛は、まびっしりと人間の頭部のように植える訳では無いので、かなり本数は少ない方なのです。しかしその分地肌がかなり目に入るので、かなり慎重に作業を進めます。とにかく、一度失敗したらやり直しがききません。なので、全身に緊張感がみなぎるのです。
しかし民謡や音頭ばかり聴き続けると「今って正月だったっけ」的な気分になってしまい→今日はもういいんじゃないのとちっちゃな悪魔が脳内で囁き→そうすると麦酒を鯨飲したくなり→いつまでたっても一向に作品は完成せず→といった最悪の事態!になってしまうのです。ダメです!大体この植毛第1日目は2015年の11月27日の事なのです。全然正月でもありません!自戒を込め普段のロックモードに耳と脳内を再設定。しかし醬油の風味は残したままにして。。。
◎『ソウル・フラワー・ユニオン / エレクトロ・アジール・バップ』(これぞ醬油味ロック!’96年)◎『オムニバス / レッツ・オンド・アゲン・スペシャル』(大瀧詠一のコミカル音頭。これは’87年版)◎『仙波清彦とはにわオールスターズ / IN CNOCERT』(この53人編成ライブ行きました!’91年)◎『竜童組 / 東京Blood Sweat & Tears』(この時代のEPICソニー特有の微妙なバブル臭が!’90年)
これにて1日目の植毛作業は終了します。作品には先程の2倍ぐらい毛が生えている様な状態です。目の焦点がかなりおかしくなっていますが。。。この寄り目作業、真剣勝負は明日2日目なのです。
●植毛第2日(前編) ううっこの刺激がたまらんのじゃぁと脳内にこまわり君登場!
今日はかなりのシリアスモード。昨日は丸一日、針先と1本の毛と蝋の表面を見つめる作業でした。でも本日2日目はそれを上回る程、デスデスなガン見とチクチク作業をしなければならないのです。
今現在植毛しようと思っている部分は、昨日の作業で6~7割、既に植毛が施されています。今回のこの作品に於いて思い描いたヴィジョンは、うっすらと地肌が見える感じの植毛です。作品によっては大量に植毛を施す事もあるのですが、今回はあくまでも「うっすら植毛」なのです。手作業の快楽に埋没して次々と植毛をしてしまうと取り返しがつかなくなってしまうのです。
——慎重に慎重に。1本植毛しては全体を見る。その繰り返し、しか無いのです。
左手に持った毛髪の束から1本を選び、それを右手に持った植毛針の二股に割れたで針先で挟み、更にそれが外れないよう注意して蝋の表面まで持って行く。距離にして僅か数センチの作業。
髪の毛1本が何ミクロンなのか解りませんが、これがなかなかやっかいな作業なのです。ドライヤーで蝋の温度も、常に適温にキープしなけばなりません。低温だと針が折れたりもします。それらを全てクリアーした上で、適切な角度も考慮して、植毛針を蝋の表面に突き立てるのです。
たかだか文字で書くとこれだけの作業なのですが、1本植えるだけでも結構な時間がかかるのです。
その何とも言えない緊張感満載のわたくしを後方支援してくれる音楽。本日はそれが必要なのです。先ずは音楽と言うより「音」そのものが、脳に直接ダイレクトに突き刺さって来る感じの3枚から。メロディや正確なビートは今は必要ありません。脳髄に直接、管を接続して流れ込んで来る様な音。この3枚は正にそう言ったCDなのです。自分自身が刺しているような、刺されているような感覚。
◎『ニュー・ディレクション(高柳昌行・阿部薫) / 解体的交感』(’70年)◎『Optrum / recorded 2』(’13年)◎『パンソリ—韓国の語り物音楽と南道系の器楽』(’72年)
『ニュー・ディレクション』は伝説のお二方による壮絶な音による格闘の記録。出血しそうです!私の学生時代から知り合いの伊東篤宏氏が蛍光灯(!)による自作楽器 “オプトロン” を演奏し、Drumsと二人組でこれまた壮絶なる有機的ノイズを奏でるユニットが『Optrum』です。ジャケットの刃先写真もこの植毛作業と、後述するチクチク感に見事にフィットしています。伊東篤宏氏に関するお話しは、近々このブログで書く予定です。なので伊東氏、暫くお待ちを。『パンソリ』は韓国伝統のシャーマン系語り物音楽。唱と鼓手だけで演じられる壮大な物語。このCDにはピリ、カヤグム、チャンゴといった伝統楽器のみによる演奏も収録されていて、その音は脳髄に直接突き刺さり、その快楽は脳のどっかで変換されて私の右手へと移行するのです。
「地獄の針山登山」と冒頭に書きましたが決してこの植毛作業、嫌いな訳ではないのですよ!というか、かなり好きな作業なのです。何処か刺青を彫っている様な、彫られているような、、、自分の脳がかなり倒錯した昭和の変態さんに誤変換されてしまっているようです。誤じゃないかも。
小学生の時に大好きだった「がきデカ」のこまわり君が、包丁の先端で自分のほっぺをチクチクし、「ううっ、、、この刺激がたまらんのじゃぁ~!!」と半白目で悶絶するシーンがあります。といっても当然、出血までには至らない程度になのですが。あくまでもチクチク程度。何故かいつも植毛の途中段階で脳内にこまわり君が登場、そしてこのシーンを再演します。
———2日目のこの時点で、思い描いた部分に一通り植毛が終わりました。本日2日目の後半からは、もう一度全体を凝視しながら毛を植え足して行きます。以降、植毛第2日(後編)は次回へと続きます。
K氏、最初に知り合った頃から「がきデカ」については、よく二人で語り合いましたよね。今思うとかなり際どいギリギリの変態ネタが満載でしたね。勿論、そこが大好きだった訳ですが。現在の出版基準ではアウトなネタも、当時小学生だった我々は軽々と受け入れてましたからね。
それでK氏、この時期に読んだ「がきデカ」の影響、作品を作る上でかなり大きいと思いませんか?
いやむしろK氏を見ていると、作品と言うよりも日常生活に於いての影響の方が相当大きいのでは?と、思う事の方が多いのですが、、、何ですかその!アンタに言われとうないわ的な視線は!それでも小学生の頃はしょせん漫画だからと思って大笑いしていたはずだったのですが、、、
「がきデカ」が脳のどっかで誤変換されたのでしょうか私達は?———やっぱり誤じゃないのかも!