K氏、前回はカセットの音に関する話をあまりしませんでしたね。それで反省。今回は肝心の音に関する考察を、一応はするつもりです。今回は実践編なので、K氏も是非カセット・テープを用意して実践してみて下さい。
さて前回書いたように、我が家には現在モノラル3台とステレオ1台、合計4台のカセット・プレイヤーがあります。(実はもう1台またもやワケありの方がいらっしゃるのですが。いずれ番外編ででも。)十数年前に買ったおしゃれモノラル—815号機と命名—は現在は再稼働をSTOPしていますが、かつてどのように稼働させていたかについて書きたいと思います。
ちなみに私は音楽心がついた時から、アナログ・レコードをカセット・テープにダビングするという行為を殆どしませんでした。私にとって音楽を聴くという事は、入手したソフトの状態で聴くという事なので。アナログ盤の劣化を恐れてカセットにダビングしたり、カセット式ウォークマン用にダビングというのも、殆どした事がありません。と、いうかウォークマン自体に全く興味が持てなかったのです。このウォークマンに関する考察も、いずれこのブログで書ければと思っています。
さてそれでは前回も登場した、おしゃれモノラル・プレイヤー815号機の話しです。上記したようにダビングは殆どしなかった私でしたが、さすがにこの815号機を入手した時はモノラルで聴いてみたい一心で、アナログ盤やCDのモノラル映えのしそうなものをカセットにダビングしてみました。 ‘モノラル映え ’ って何?と言われそうですが、、、何でしょうね。
ひとつには最初からモノラル録音された音源です。前回少しだけ書いた “古いSP音源を発掘したCDや、60年代や70年代ロックの再発モノ” もここに含まれます。例をあげるとCDではこんな ↓ セレクションでしょうか。
<◎『トリロー娯楽版-三木鶏郎と仲間たち-』◎『トニー谷/ジス・イズ・ミスター・トニー谷』◎『浜村美智子/バナナ・ボート』◎『笠置シズ子/ブギの女王』>
<◎『ザ・フォーク・クルセダーズ/ハレンチ』◎『阿部薫/暗い日曜』◎『イマ・スマック/ザ・ベリー・ベスト・オブ・イマ・スマック』◎『野坂昭如/辻説法』>
そしてその考え方を少し延長させると、例えステレオ録音されたものであってもその音楽が流行った当時AMラジオでさかんに流れていたり、まだステレオが高価だった頃その音盤の主な購買層がビンボーな若者でポータブル・レコード・プレイヤーで主に聴かれていたのでは、と推測したくなるような音源です。今度はCDとLPを取り混ぜて。↓
<◎『ザ・モップス/VINTAGE COLLECTION』◎『頭脳警察/セカンド』◎『THE VENTURES/POPS IN JAPAN+POPS IN JAPAN No.2』◎『ドアーズ/ソフト・パレード』>
<◉『ダウン・タウン・ブギウギ・バンド/脱・どん底音楽会』◉『荒木一郎/荒木一郎の世界』◉『セルジオ・メンデスとブラジル’66/ライブ・アット・EXPO’70』◉『日野てる子/港の丘に泪して』>
次には、特殊な音響効果としてでは無く、明らかに最初から録音状態の悪い音源です。海賊版等もこれに含まれます。私はあまり所有していませんが。左右のバランスが極端に悪かったり、録音時のヘッドの性能が悪くノイズが多い音源等は、モノラルで聴くと不思議と少しクリアーに聞こえたりもします。但し、全てではありません。場合によってはもっと聴きづらくなったりもしますので、ご注意を。
もうひとつ裏ワザとして、擦り傷の多いアナログ盤をカセットにダビングしてモノラルで聴くと、ノイズが軽減される場合があります。但し、針飛びや音に出る引っ掻きキズではなく、あくまでも表面的な擦り傷です。レコード盤全体が擦り傷だらけで常にノイズが入り、なおかつ針飛びはしないといった状態です。これも先ほど書いた海賊版と同じで、全てのノイズが軽減される訳ではありません。モノラル録音されたレコードの方が、ステレオ録音よりも聴きやすくなったと記憶しています。
そしてこれが一番説明しづらいのですが、ステレオのオーディオ装置で聴いた場合に、何かが “ピン!と来なかった音源” です。
これまた前回チラリと書いた “アジア歌謡のカセット等” ↓ が私にとってはそうでした。
<■『テレサ・テン(台湾)』■『イ・パクサ(韓国)』■『ツイ・ジェン(中国)』■『銭幽蘭(シンガポール)』■『S.O.S.(韓国)』■『唐朝楽隊(中国)』>
<■6本全てタイのカセットです。読めないので表記出来ません。>
全ての味付けが全く同じに感じるC級或はD級中華料理店の小さなボロ・ラジカセで、延々にループされ続けるテレサ・テンのカセットの音。歪み過ぎです!あるいは、どう見てもタイ人が1人もいない謎の異国人だけが働くタイ料理屋で、カセットが悪いのかボロ・ラジカセが悪いのかあるいは全てこちらが悪いのか等の疑問を差し挟む余地もないほどに迫って来る、ハイテンションで素っ頓狂なポンチャック。ここはタイ料理屋なのに、なぜ韓国のポンチャック?おまけにテープ速度、ムラ有り過ぎです!更には、インド・カレーと中華が食べ放題という意図不明のお店で働く、生まれてからその口で嘘しか言った事が無いような国籍不明店員が、店内BGMに合わせて口ずさむ意外とまともな民族音楽。嘘つき特有の歌の上手さです!
と、いったアジアの純真なライブ、あるいはレイブ体験をしてしまうと、ステレオ装置で聴いた場合に何か巨大な欠乏感を感じてしまったのです。
しかしだからと言って、何でもモノラルで聴けば良いという訳では全くなく、元々の音源がクリアー過ぎたりするといくらカセットにダビングしたところで、CDやLPで聴いた印象と大差がなかったりもします。当然、歌手の声質や楽器の音質によっても色々と左右されたりします。私の “ピン!と来なかった音源” の50~60%は、モノラルで聴くと新たな発見がありました。
でもこれはあくまでもわたくしの超個人的な音楽の嗜好なのであって、ウィ~ン少年合唱団でもクラフトワ~クでもバラク~ダ~でもライ・ク~ダ~でも、色々と試してみるとそれなりの発見があると思います。あくまでも、それなりのですが。
K氏、ここでひとつ忠告なのですが—夜な夜なCDやLPをせっせとカセットにダビングし、モノラルで聴いてひとりほくそ笑む—こういった変態的行為は、家族には絶対に見つからないように心掛けて下さい。妻+実母による左右両陣営からの「何してるの?」等といった心ない同時多発質問は、折角のモノラル効果を半減させてしまう恐れがありますので。
K氏!さらに我々の敵はたくさんいます。妻をフロントに配置しその左右に実父と実母、監視させるかの如く背後左右に義父と義母+うっとしい超低音域は変声期を迎えた肥満気味の中学生1人息子に—こういった5.1システムに浸る事こそが最高の幸せ!と信じて疑わない人達は、モノラル道なんていうケモノ道なんかとんでもない!と言って眉をひそめるのです。それだけ大枚をはたいたお宅のオーディオ、最近音が分離し過ぎていませんか?
ええ、どれだけレコードやオーディオにお金をかけようと、人間最期は “おひとりさまのモノラル道” だと、私は覚悟出来ていますので。
ちなみにK氏、わたくし現在愛聴のスピーカーは1個しかありませんので、尚更に。