007. カセット・プレイヤー・フェティシズム その4~ブルーハーツはラジカセで!編

さてK氏、それでは始めますか!前回予告した、ステレオ・ラジカセ映えするカセットの話しを。

ここ数年来、自部屋のカセット・デッキが不調でずっとカセット・テープを聞いておらず、かなり欲求不満状態でした。それもずっと放置しっぱなしだったので再生できるか不安でした。

第3回に書いたように、7月7日にステレオ・ラジカセ “七夕号” を入手しました。不安を抱えつつも、2と表記のある方のカセット・プレイヤーは正常に稼働し、それが、予想以上の音を出して驚かせてくれたのは前々回にも記した通りです。

数年の不満を晴らすべく、しばらくは七夕号でのカセット・テープ三昧の日々を過ごしました。部屋を移動する度にヒップホップ小僧のように常にラジカセを持ち歩き「こうなったらテープの劣化チェックも兼ねて、所有のカセットを全て聴いてみよう!」こう思い、とにかく片っ端から四六時中聴きまくったのでした。

ちなみにここで言うカセット・テープとは自分でダビングした物ではありません。あくまでも、市販されていた音楽ソフトとしてのカセット・テープです。それで何本あるか ↓ と数えてみると、邦楽76本、洋楽~アジア物が60本、合計で136本でした。

<ホラホラ、これが僕のカセットだ—但し全てでないところがなんとも可笑しい。>

この数が多いか少ないかは正直わかりません。この何倍も所有している人もいるでしょうし、殆ど処分してしまった人もいると思います。この136本の中には、数本のカセットブックや、本人がダビングしたと思われるインディーズ物、限りなく海賊版に近いアジア物、俗に言うバッタ物、サンプルカセット等も含まれます。

今までに劣化して処分したカセット(アジア物と英国製が多かったと思います)や、さすがに聴かなくなってヤフオクや中古レコード店に売却した物もあります。その数は、おそらく20~30本くらいだと記憶しています。

さてそれで、この136本中、何本のカセットがダメだったかというと——はい わずか 2本で あります—— なのです!驚いた事に。1本は途中で完全停止、もう1本は止まるものの再度PLAYを押せば何とか最後まで再生。136本中、3分の1ぐらいは止ったり巻き込んだりするかと覚悟していましたが。

気をつけていた事といえば、テープのブランク部分を早送りしないという事ぐらいでした。つまり、テープの片面が30分だったとして、その内25分間音楽が収録されていたとします。ラストに5分間のブランクがある訳ですが、そこを早送りしてしまわないという事なのです。かなり昔に何の本で読んだかは覚えていませんが、それが長持ちさせるコツだと。おそらく早送りさせると、そこだけ巻きの堅さが変わってしまうのでしょう。それでもこんなに効果があるとは。カセット好きの方は是非共お試しを。

ここまで書いた話しで「自分でダビングした物は認めない」と言っている訳ではありません。当然私もダビングしたカセットは、かなり所有しております。特に日本製の生カセットはかなり精度が良いので、よっぽどムチャな扱いをしなければかなりの年数保つと思います。音楽ソフトとしてのカセットより丈夫でしょう、きっと。ただ、このブログではあくまでもソフトのフェティシズム追求も重大なテーマですので。

カセット・デッキとラジカセを所有していて、いまだ双方ちゃんと稼働するのであれば、LPやCDからカセットにダビングしてラジカセで聴く事は、リマスターされたSHM-CDやSACD、あるいは180g重量盤LP等を、オリジナル盤と聴き比べて聴くのと同じくらいの新たな発見があると思います。何も音が良い事が全てではありませんので。

 


 

マクラが長くなりました。いつもの事ですが。。。やっと本題に入ります、K氏。今回ステレオ・ラジカセで聴いて、オーディオ装置で聴いた時と大きく印象の変わったベスト3を。

まず第1位は■『ザ・ブルーハーツ/TRAIN-TRAIN』↓ 彼らの1988年発表の3rdアルバムです。

<左が紙ケース表側、上下逆に見えますがこれが正位置。右はケース裏側の曲目です。>

「ブルーハーツ」は前期三部作の「ザ・ブルーハーツ(1st)」と「YOUNG AND PRETTY(2nd)」と本作しか所有していないのですが、このアルバムはたまたま中古カセットで入手しました。楽曲自体は粒ぞろいなのですが1st、2ndに比べてかなり洗練された印象で、ロックンロール色が強まった分パンク色が薄らいだので、私にはあまりピンと来ませんでした。しかしそれがステレオ・ラジカセだと、まるで違って聴こえたのです!特にこの七夕号の “アンビエンスモード” で再生すると音の広がりが増し、と言っても決して洗練されたクリーンな感じの広がりではなく、猥雑でバタバタした彼ら本来の持ち味がググッと全面から飛び出して来るように聴こえるのです。パンク・ロックと言うより、むしろガレージ・パンクに近い印象さえ受けました。

このステレオ・ラジカセ “七夕号” 1984~1987年くらいの製品だと推測しているのですが『TRAIN-TRAIN』も1988年発表なので、時期的に音との相性が良いのでしょうか。この時期は(全てではありませんが)LPとCDとカセットの3種類でソフトが発売されていて、彼らの最大のヒット作である本作のカセットも、おそらく相当な本数が売れたはずです。「ブルーハーツ」の主な購買層である中高生はLPやCDをオーディオ装置で聴くよりも、カセットをラジカセで、という人の方が多かったのではないでしょうか。「ブルーハーツ」の一番の購買層の彼らが、一番ポピュラーな聴き方をしたラジカセだからこそ聴こえてくる音もあるのでは、と改めて考えさせられました。「ザ・ブルーハーツ(1st)」「YOUNG AND PRETTY(2nd)」も、是非カセットで聴いてみたいものです。

 

そして第2位は■『ツイスト/A面コレクション』↓ カセット特別企画です。

<左が表ジャケ、いくらなんでものデザイン。右はその内側の曲目です。>

「世良公則&ツイスト」と言った方が解りやすいかと思いますが。1977年のデビュー曲「あんたのバラード」から、1981年のラスト・シングル「SET ME FREE」までの全シングル11曲を年代順に収録し、1983年にリリースした物です。A面6曲が1977~79年まで、B面5曲は1980~81年の楽曲が収録されています。このA面の時代が私にとってちょうど中学生にあたる時期で、テレビではよく観ていた程度で大した思い入れも無かったのですが、これをラジカセ “七夕号” で聴いてぶっ飛びました!というのも、このカセットを古道具屋で50円で買ったのは数年前で、前述したようにカセット・デッキの調子が悪く1~2回しか聴いていなかったのです。「ちょっと懐かしいし、50円だから聴いてみようか」くらいの軽い気持ちでした。それにどちらかといえばロックというよりも、この時代の “歌謡ロック” だと考えていましたし。しかし、この当時の中学時代にはほとんどレコードを買わなかったわたくしでしたが、今現在の耳で聞く「ツイスト」は、ここ何年間かの私の音楽遍歴の集大成のようにも聴こえました。

韓国ロック、キャロルやクールスの甘酸っぱさ、三上寛や布谷文夫の絶叫、ジョン・スペンサー、殿さまキングスのアジアンなこぶし、韓国演歌の羅勲児(ナフナ)、極初期のエレカシ、ギターウルフやMAD3といったガレージパンク、正式デビュー前のピストルズのもったり感、クールファイブの裏に潜むR&B性、岡村靖幸、プレスリーのパワフルな復活ライブ盤、ゆらゆら帝国のダメダメ感、幻の名盤解放同盟、崔健やパンタのアジア骨太ロック感、CKBのとっ散らかった部分、レンジャーズやアウトキャストといったカルトGS、、、、、、

ここ数年、ちょっとした音楽通の間では「辺境モノ」なるジャンルが確立されつつあります。タイでもトルコでもエジプトでもパキスタンでもアフガニスタンでも、、、とにかく今までロックとは無縁とされていた土地のロックやポップスを発掘したCDやLPが、各国のマイナーなレコード会社から続々とリリースされているのです。そこで、耳だか頭のスイッチを “ガイジンさん” つまり「ニホンゴ、マタク、ワカリマセン」モードに設定して「ツイスト」を聴いてみるのです。そうです、丁度「辺境モノ」を聴くのと同じ感覚で。

わたくしの予想では、近い内にアメリカだかヨーロッパだかのガレージ/サイケ/辺境のマニアが、日本の中古レコード店の100円コーナーで「ツイスト」を大量に買い漁るのではと考えています。そうなるとなぜか日本では手に入らなくなり、海外のオークションから高額で買うという春画状態になりかねません。ついこの間まで100円で売られていたにもかかわらずに!です。そうならないように今からでも100円コーナーから「ツイスト」の救出を、是非お早めに。

そこで「ブルーハーツ」~「ツイスト」と聴いて、何となく考えました。もし私が中学か高校時代にステレオ・ラジカセを所有していたならば、その後の音楽の嗜好が今とはかなり違ったものになっていたのではないかと。おそらく当時、こういった音楽を聴いていたのでしょう。

ロック系では、RCサクセション、それにモッズやARBやシナロケ等のいわゆるめんたいロック、
パンク系では、アナーキー、ルースターズ、クラッシュ、ラモーンズ等のくっきりした音、
ディスコ系では、ブロンディー、ドナ・サマー等のダンシングなピコピコ音、
ポップス系では、大瀧詠一、佐野元春、クールス、ヴィーナスといった米国ルーツ寄りサウンド、
英国寄りではストーンズからビートルズを経て、キャロル~矢沢永吉、、、

、、、って書いていて気付きましたが、これってまるっきり田舎の音楽好きヤンキーのセンスです!そういえばヤンキーとステレオ・ラジカセは、非常に相性がよかったりするわけで。そんなこんなで、中高校時代にステレオ・ラジカセを持っていなかった事でヤンキーにならずにすんだ事が、良かったのか悪かったのかはわたくし解りませんが。

 


 

そういえばK氏、以前貴殿から聞いた話しで——実家の離れ(プレハブ)を自分のひとり部屋にするという田舎に有りがちなパターンで、その男が高校生の頃ボヤを出し、父親に顔面をパンチングボールの如く殴打された挙げ句、80年代型巨大ステレオ・ラジカセを思いっきり叩き付けられたという話しがありましたね。

ちなみにその人、ヤンキーでしたか?それに、どんな音楽を聴いていたのでしょうか?——その時ラジカセが再生中なら一体どんなカセットが一番映えるのでしょうか?曲で言うと、シャネルズの「ランナウェイ」辺りが映えそうに思えるのですが。。。

さて、次回は第3位の発表と、さらに広範囲なラジカセ映えするカセットのお話し。乞うご期待!

 

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